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zoom RSS 台湾文学における兵役(陳火泉)

<<   作成日時 : 2006/08/21 23:51   >>

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大日本帝国というのは、もうご存じかとは思いますが「五族協和」とか「内鮮一体」、「内台一体」とか、「平等」をスローガンにしていて、実態はものすごい差別的な構造があったわけです。

 一言で言うと、本国の臣民ー沖縄の人ー朝鮮の人ー台湾の本島人ー南洋諸島の人、台湾の先住民 というような序列になっていたわけですね。

 台湾の先住民は中国系の人からも日本の人からも「生蕃(人にあらず)」というように言われていましたし、日本の法律の中では、土地とかの不動産の所有の主体にもなれないわけです。なぜか?「人間じゃないから所有なんかできない」というわけですね。

 ところで、こういう序列にかかわる問題なんですけど、帝国内での「臣民としての義務」の側面でも本国人とはかなりの格差があったわけです。

 権利の側面でも、植民地出身の人は、教育とかの面での差別がありましたが、その裏返しで「臣民の義務」の側面での差別もあったわけです。

 たとえば「徴兵制」です。日本の支配層は、植民地住民を軍に入れることについて、差別的な意識と、もう一つは、言語的な問題(つまり指揮命令系統の保持ということ)、さらには、反乱の恐れと言うことで、拒否していました。

 ところが一九三〇年代半ばに中国への侵略を本格的に始める中で、そんなことを言ってられなくなるわけですね。

 だから朝鮮では在郷軍人会などを介した形での「自発された強制」としての「志願兵制度」を一九三八年に、ついで徴兵制を一九四一年に実施したわけです。
 
 台湾では、やはり日中戦争がはじまっても、しばらくは台湾人を戦場に出して、台湾の人と同じ中国人と対峙させるのが怖かったんでしょうか、それとも、もともと統一された国があった朝鮮との違いなんでしょうか、(おそらく両方でしょう)志願兵制度は一九四一年、徴兵制は一九四五年になってからやっと実施したわけです。

 ちょっとねじれた話があります。それは陳火泉、周金波という二人の作家が、志願兵制度について一九四一から一九四三年までの間であわせて三作品書いているんですが、この3作品に共通しているのが「日本人になるがゆえに皇国史観を徹底的に身につけようとする本島人(台湾人)」が主人公だということです。
 
 そして、この3つの作品の中では、主人公たちは日本人からも本島人からも疎んじられるくらい熱狂的に皇国史観を周りに吹聴するんです。

 これらの作品の作者たちは、やっぱり日本人の台湾人へのまなざしをよくわかっていたんですね。熱心に皇国史観をしゃべり、天皇崇拝をしゃべる台湾人に対して、日本人のほうから「まあまあ、そんな行き過ぎずに」とかいう態度をとるわけです。すごく冷ややかなわけですね。ちっとも信用していない。
 この態度を裏付けるように一九四四年に総督府の新任官僚向けに配られたパンフレットでは「本島人というのは裏で何を考えているか分からない」なんてことを書いているわけなんです。ちなみに陳火泉の一九四三年の作品「道」という長編小説の主人公は、優秀な、それこそ総理大臣から表彰されるくらいの、樟脳(ナフタリン)竈の技師なんですね。(なお陳火泉自身が樟脳技師なんです。そして一九四一年には東条英機から表彰状を受け取っています。)
 なお、樟脳生産というのは結構重要なんですね。というのは樟脳というのは植民地台湾では、日本の専売特許という形になっていて、国家にとっての重要な産業なんです。そして一九四〇年代当時、世界の樟脳生産の90%が台湾製だったんですね。そこでの日本人技師というのは、とにかくエリート中のエリートです。その中での台湾人技師というのは確かに植民地住民のなかではエリートですが、日本人からしたら二流臣民からきた成り上がりでしかないもんだから、すごい差別に苦しむ。だからこそ、主人公はよけいに日本人になろうとするんだけど、どうしてもなれない。で、結局かれは完全な日本精神を身につけようとして、そして「臣民の道」を身につけようとして、志願兵制度に応募して戦場にいってしまうわけです。
 周金波の「志願兵」という作品では、台湾が、日本の一部であること、そして台湾人と日本人が平等な存在であるということを知らしめようとしてわざわざ「血書志願」する台湾人を描きました。
 また、陳火泉の『張先生』という作品では、主人公は本島人の教師です。話としては立派な日本人しようと本島人の子どもに、同化教育をがんがんやる本島人教師が、自らがこどもたちのために率先して日本人になろうとして志願兵に応募して、検査でおとされる、そして最後は(話が飛びすぎていてうまいさくひんではないんですが)、山本五十六の戦死の報を子どもに話すというシーンで終わるわけです。

 日本人と平等であろうとして、みずから死を再生産する場に身を投じるというところまで追い込まれる主人公を二人ともが描いているわけです。でも、その平等の願いが、届くわけではないということもこの作品の中で示されています。だって最後まで日本人たちはこれらの主人公を信用しないわけですから。

 さらに、志願兵の道を選んだ先のことも陳火泉はきっちり書いています。『張先生』のラストシーンでは、張先生は、山本五十六の話をしたあと、子どもたちにたいして「おまえの所でも兄が戦死したらしいな、」とか「お父さんが戦死したみたいだな」という話になります。つまり、子どもたちの親や兄の多くが志願兵として戦地に行き、戦死しているということが示されるわけです。そして、張先生がそうした話をしたとたん、教室内のあちこちからすすり泣きの声が響きわたるわけです。そして、張先生は、「日本人なら泣くな」なんてことを言うのですが、教室内で子どもたちの悲しみの泣き声はやみません。しまいには張先生自身がもらい泣きしてしまうんです。
 山本五十六の話なんて、もはやどこかに吹っ飛んでるわけですね。おそらくは、日本人の読者とか、日本の当局むけには山本五十六の話をしたほうがいいと作者は考えたのかもしれません。特に検閲の段階で、親や兄が死んで、すすり泣きというだけだと「厭戦気分が漂っていてけしからん!!」みたいな話になって作品が発表できないかもしれないですからね・・・。
 

 結局、日本人の植民地住民への差別は、彼らの平等になりたいという願いを、兵役という墓場につながる道につなげて、そのまま本当に墓場まで(いや、墓場すらない場合が多いですね)追い込んでいきました。僕は帝国の中にあるえぐい差別こそが、日本の侵略戦争に植民地住民を巻き込んでいった重要な要因であると考えています。

 では、彼らを悼み、二度と植民地支配とか、侵略とかをしないという誓いと実践はなんなのでしょうか。それは、植民地の住民をも戦争に駆り立てた国家の、一つのイデオロギー装置としての靖国ではないはずです。

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