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zoom RSS 巣山靖司『勢力均衡論と世界平和』新日本出版社 1985

<<   作成日時 : 2006/08/21 23:57   >>

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今回はちょっと台湾から離れて、国際政治学のある文献の紹介です。

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巣山靖司『勢力均衡論と世界平和』新日本出版社 1985
 巣山氏は1937年生まれで、ラテンアメリカをフィールドにした国際政治学者です。この本は、ウェストファリア条約以降の西洋国際体系、すなわち国民国家からなる国際関係において、根強く残っている「国家間の勢力均衡によって平和を創出する」というイデオロギーをいかに乗り越えるか、ということが理論的な問題意識となっています。現実へのアプローチという側面では、核兵器の廃絶と第三世界の貧困という現実をどう変えるかということが彼の問題意識です。
 まず、氏によると「勢力均衡論」の立場に立つものの特徴としては、「国内政治と違って世界を、支配・統合する権力が存在せずアナーキーである」ととらえることです。そして、その発想が即座に「力」の役割を重視し、国際政治のアクターを主権国家に限定するという考えにつながる、としています。
 こういった勢力均衡論に挑戦する理論の批判的検討の中で「NGO」論を紹介し、この論がトランスナショナルな現実を反映はしていても、国際政治における人権侵害とか公害とかについて、「なぜ」こういった問題が起こるかについては説明していないと批判しています。
 さらに鴨武彦などの「相互依存」論については、国際政治における権力政治的な側面を、言葉の上で批判しながらも、実際には、むしろそれを容認しているにほかならないとしています。それは、氏によれば、現実において、発達した資本主義国家と第三世界の関係は、平等に相互依存の関係があるわけではなく「非対称的相互依存」の関係にあるからだとしています。
 つまるところ、勢力均衡論は、第三世界の問題と軍事の問題を切り離し、貧困の問題をまったくみない無責任な理論であるとし、次にそうはいっても核廃絶、軍縮、そして飢餓という世界の問題を解決するための適切な理論は提起されていない、というわけです。
 さて、この本は1985年に書かれた本です。すなわち冷戦期の本であり、2006年の今、なぜ紹介するかと言いますと、現在起こっている世界の貧困の問題や核、軍事の問題がとりもなおさず、冷戦期の負の遺産、あるいはもっと前の植民地時代の負の遺産を積み残したまま、歴史が推移しているからです。
 日米安保ひとつとっても、安保そのものが、冷戦期の勢力均衡論の論理である、「ソ連への脅威」という論理から構築されたもので、現在の日米安保は、アメリカが主体となって、この体制を変質させたものです。
 また、アフガニスタンにしてもソ連の侵略に対して、アメリカが「反共ゲリラ」を育てたことで現在の問題が発生していたりするわけです。ちなみに氏はこの本の中で、ソ連もまた、勢力均衡論に基づいて行動しているのだ、とします。そしてその発想は、レーニンの、「国際的な階級闘争と、民族解放闘争」の、社会主義との連帯という意味合いでの「体制を異にする勢力均衡」の肯定という論(これが妥当かどうかはともかく)をもゆがめた、スターリンによる「階級矛盾、民族矛盾」を無視した大国主義から出発している、としています。そうした批判を通じて、氏は徹底してソ連の、東側諸国への侵略と干渉を批判します。そしてこのソ連への認識なくして、氏の冷戦期の国際政治に関する理解を把握することはできないでしょう。冷戦がその後崩壊し、ソ連やアメリカの「国際援助」が途絶えた諸国家が危機に瀕したり、旧ソ連製の武器が拡散したりするという現実を考察するとき、なぜ、冷戦後にこれらの問題が噴出したかを考えるならば、究極的には冷戦期をソ連ーアメリカによる、核による「恐怖の均衡」を基調として、自らの目下の同盟国と少数民族を抑圧し続けた時期であるとみるしかないでしょう。この2大国の支配下にあった独裁者も、彼ら自身の意思もあったり、その国の社会構造や、歴史もあるでしょうが、軍事や経済をこの2大国に握られている例はたくさんあります。(日本もそうですね)

 そういった意味で、特に1945年から1989年くらいまでの冷戦期の世界を的確に把握することが大事だと思います。そして、それを踏まえて、現在、この体制が、どのように変容していったかを把握することこそが、現代の世界政治を読み解くことになるのではないかと思います。
 そう考えると、現代の世界政治は、勢力均衡ということを前提には成り立ってはいません。むしろ、経済のグローバル化という課題だったりとか、そこからでてくる問題をどういうふうに解決するかというところが問題になってます。しかし、他方では、冷戦期に積み残した問題が、冷戦後に別の形で問われているような問題もあります。また、冷戦期にはクローズアップされなかった、バルカンやロシアでの民族紛争などは、本当は、ずっとくすぶっていた問題であったわけで、これは、むしろ冷戦期にほうって置かれた問題が、今ふきでているわけです。 では、なぜ、そしてどのように吹き出しているのか?この問いは、歴史の問題を考えることなしに解ける問題ではありません。やはり、少なくとも「冷戦とは何か?」という問いに対して的確に説明できてこそ、これら現代の諸問題を説明できるのではないでしょうか?この本からは、そういった問題を説明する一つの手引きになるはずです。というよりもむしろ、冷戦後10数年が経過して、この本の的確な「読み方」というのは、現代を歴史的方法によって説明するための「手引き」以外の何者でもないと思います。
 よって、僕は、今でも「勢力均衡論」への批判をすることは「ふるい」ことではなく、歴史的に「勢力均衡論」を検証することで、現代の問題を明らかにすることにつながると考えます。

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内 容 ニックネーム/日時
今の時代は、豊臣秀吉が小田原城を囲み、小田原評定が終わった段階のように見える。それ以降は外交交渉のみで国内鎮定が行われている。
秀吉が、死ぬまで政権運営ができたのは検地・刀狩を施行したせいであろう。短期ではあったが、一揆の減少に成功したのだと思う。
今は時間の経過が早い。
今の秀吉は米国です。色々駆け引きして他国に対処している。秀吉も自らの母親を人質として差出、家康との主従関係を構築した。
米国はどれだけの外交手腕を発揮するのだろうか。
近い将来、体制変革が起きるのではないかと思っている。
どういう形になるのか楽しみでもあり、不安でもある。
Hbar
2006/08/23 12:40

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